2019-01-01から1年間の記事一覧

患者

戯れに乗せられた言葉だけが、雲と雲の中に、空の穴に入り込んで彷徨う。佗しい恰好をしてたって、路傍で褒められることもある。ぶざまに有頂天、道行く詩情のないネコや赤錆の目立つ道路にだって感謝の気持ち。空が移動し、雨を運んで行った。心配症な僕に…

宣告

私をあなたに溶かし込んでほしいほんの少しでいい面倒だったらかき混ぜないでこの血が匂うなら別のなにかで洗浄して自分だけでは耐えられない風に乾かされ渇き切ってしまうお願いだから前を向かないで持ち直すのをやめて一緒にこのまましずかに斜面を流れる…

モチーフへと

ぶかぶかとしたグレープフルーツの香り髪は長く毛の先の湿りまでうっとりとその鼻先の色と視界を包む匂いをまぜあわせてそのままふたつの眼を瞑りさながら子どもの興じるテトリスのように走る列車の音に横切る木々と意識を溶け込ませ 時に足音、新聞の掠れる…

嫌だ!

俺は漫画なんて描きたくない、ペンなんて持ちたくないその絶体絶命の世界で剣を取って、勇者そのものになりたかった俺は音楽なんて創りたくないそのメロディに、その楽譜から香る陶酔そのものになって皆んなを癒したかった歴史家より歴史の一ページに、監督…

パレット

俺は何度も振り返り、何度も書き直したパレットは色がごちゃごちゃで何がなんだか分からないこの狭い部屋にたった一つの窓から黒い鳥が風に流されるのが見える人はそれを見て、空に居られるのが羨ましいとか言ったり 俺は想像の上で何度も書き上げた時にはそ…

海岸

俺の部屋には壊れて動かなくなった自転車があるそれはいつ見ても他人行儀にただそこにあるペダルを触るとひんやりと冷たくてそれをただぼんやりと手でまわしていると 家族と行ったあの熱海の生暖かい風や細かい粒子の砂粒まで思い起こさせてくれる一生懸命作…

テレビ

部屋が薄暗くなるほどの情念がまばたきの隙間にもみえる悲しい不幸体が重たくてでも意識は鮮明で だからよく冷えたこのコップが肌に沁みる窓から見えた電線は雨で濡れてるテレビでは狂気含んだ大歓声 テレビを観てる家族はすこし欠伸をして街路樹、溝で眠る…

コイン

冬の香りが頬に滲む中学の時にみてたコインその反対側にあったのが今の僕 コップの下に滲んじゃってるミルクティー拭くのもめんどくさいやカランコロンと鳴るオモチャ 中学の時にみてたコイン裏側でひかっていたのが今のぼくそこで滲んじゃってるのが今のぼく

風たばこ

風の吹く草原でたばこを吸った 綺麗な煙が空を真っ青に染め上げて僕はまた見て見ないふりをする 風にそよぐ自転車とススキ顔をしかめてうんざりさ近くの川では観光客のこどもが飲み込まれた 近所ではうわさばなしあちらこちらで電線がひかってるぼくはポケッ…

季節

コップから溢れるばかりの情念が喉を塞ぎ体は心を離れて宙ぶらりん明日は今日へと漏れ出してる見馴れた玄関にもおぞましい怪物が道を忘れた魚のように漂って通勤路の涼やかな木陰に不吉な塊が机のようにそこにある 夜のベッドの懸命な映像にも美女はいない地…

雄鳥

倦怠は化学表に載らない気体であるいつも気づけば臓器に充満し希望を喰まんとする口を拒絶するそれでいてある時は自分の肉体の外部に部屋の隅にさながら忘れられた毛糸玉のように転がっている その穂先はいつ見ても何処かべったり湿っぽく赤と青の斑点が散ら…

地味な顔と良い体 ほんとに最高だなって思った 彼女が娼婦だったらいいな そしたら色んな男の話も聞ける 明日とは呼べない白い絨毯の上 聞くたびに心が粗く固い石になるのを感じるのなんて、 さいこうだぜ 雨が窓を濡らしながれるように 出来事が鬱を生活を…

前書き

俺はこの世界を論理で構築したかった甘ったるい叙情を排して、厳しく選び抜かれたピースだけで、世の中のスペースを隙間なくキツキツに敷き詰めて、調和の美を実現したいと思ったしかし俺には数字や図形、記号というものが、同時に酷く息苦しい別世界の借り…

オヤジよ死ね生活を破片から粉々に向学心を大気圏の外に幼少の不信がいまの不安な瘡蓋に呼吸は吐いてばかりだ俺の心臓の周りにはミミズ腫れ引っ掻いて首を傾げる重ねて塗りたくったような表情あとがきだけの人生

紙風船溶けて工場ができた

紙風船溶けて工場ができたそして鉄道が走り男娼は使えないボールペンしきりに書いてる 風見鶏彼女を連れてって風見鶏情け無いから風見鶏手がながれた シカが走り回って森が咲いて盛りを過ぎてその間にも人は死ぬ緑が増えて視界が滲むあの日の高級車は心の奥…

to Benzi

私が歩いたとき、外は街だったそこには美しいものはなにもなかったただただ密集する蝉たちが、不要になった言葉どもを塗りつぶしていた 私は怖ろしかった、宿題のないのが私が夢にまでみたテニスコートでは黄色いボールが優しげに跳ねていた私はそこにいる人…

黄金の指、広々としたプール

黄金の指、広々としたプール広場では水晶のような子ども達が明かりに照らされて笑ってる 親たちの顔は闇夜に浮かぶ深海魚偽の風に吹かれて晒されて キャメラは海に落ちて息を吐いてる 夕陽、顔負け、夕日吐息はキャメラ

女は線、

女は線、男は台形、星は韻律の世界の彫像か背中の曲がった老婆が線路下、なにも知らない浮浪者に道を尋ねた時その上で憂鬱な空は前進する、アルバイトの女は帰り道 君の存在よりも、脱ぎ捨てた着物にきみを感じるのなら、生き物がそちらで、こちらはただの白…

懺悔

殺人犯にだって、家から遠く明かりの漏れた窓がある 殺人犯にだって、嘲笑の末渡せなかった手紙がある 殺人犯も午後のやわらかな風に吹かれて 殺人犯の足下には子どもたちの飛び越えた水たまり 殺人犯も夏から秋へと変わる今の匂いが好きだ またここに戻って…

意思のひと

意思の炸裂紙を突き破るように猫の目を濁らせるように雲を薄く引き延ばすように夜の風鈴、控えめな戦車時々寄るよ牛が空に鳴くころ

紅い花に囲まれた果樹園

紅い花に囲まれた果樹園 ヒースの丘 薄い銀の海 裏切られた友人家族 病弱な犬 極彩色の夕焼けに横たわる?

夢中

俺には心がある、これが何かになればいい ゆりうごかせば、覚めるのか 取り上げてやれば、拗ねるのか 冬のタイルに打ちつけて、その跡はのこるのか 痕跡になってはじめて人は確認出来る 虫、蝶、車輪、瓦屋根、皆んなそうだ 苦しいばかりが癖になってきた 動…

夜が世界を飲み込んだそして星たちを吐き出したのだ 愛した女が更年期障害だったさ 星の罵声を背にして雪の残る裏路地を優雅にあるく 自動車工が汗水をたらしてる目に映るもの全てやさしく冷たいものばかり

美女の鞄からオレンジ

美女の鞄からオレンジそれはぼくに夢を見せた 最高の夢夏子と仲良く過ごす夢 化石と七色の六角レンチ君の瞼は尻拭いをおそれた それは内臓のようなものだった想像上の果物で色を塗りつけた

夜の窓

過信。過信が奇跡の素だ。 味噌から手が突き出てきた。 それは夜の星空を掴み、憐れな讃歌を聴きながら。 タンクローリー、夜より浮き出て昼間の鬱憤を晴らす。 世界だ。世界の歪みと遅延は、未来の喜びだ。 この世の不幸は、来世からの切符だ。 カフェの住…

粉塵な夜

お前の魂と頭蓋骨は粉々ごちゃ混ぜになって嫌悪と吐気とに溶けあっている 枯れた大地にも掛けるみずうみの血潮 嬉しいだけの感情がここでは光佇んでる 御礼を言いたくて頭を下げた いつも廊下で突っ立ってる亡霊は見境のない案内板か わが魂は路面の底に擦り…

包帯

無口な林檎が荒波も自然の光も浴びた公園の滑車をも乗り越えてやってくる それは活写された上映、患者をあつめて炎上する薪の跡 骸骨は隣の城に居座って 星のきらめき、東海の肌寒さ ことば遊びが何になる サッカーボールが残酷な想い出、蘇らせて 俺はそれ…

街並み

呪いの少女と街を歩いていたその町々の雰囲気は荘厳で家々からこぼれ出る灯りはまずしく光り輝いていた歩けどあるけど踏み締める足の感触がない雲の上を歩かされているような少し身体ごと夜に傾いて行っているようなそんな感覚を覚えた少女の方をちらりと見…

悲しきイカロス

イカロスは墜落したもの 人類なんてどこにあるかも分からない正義が、目の前の人々を殺し海にした あの娘に借りたラッパが悲鳴をあげちゃうくらい美しいなこの贋作ばかりの銀灰の世界は

嘲り

俺のなかの詩神を取り返しに行ってる 無力感こそが、若き頃よりの俺の伴侶である 自分の才能への確信、懐疑の消滅 どうしたら俺の心は救われる 人から称賛されたら? 多分そうだ、結局俺の判定は何も赦さない 自分のなかの芸術家を絶えず虐めてしまう 鉄の桶…