前書き

俺はこの世界を論理で構築したかった
甘ったるい叙情を排して、厳しく選び抜かれたピースだけで、
世の中のスペースを隙間なくキツキツに敷き詰めて、調和の美を実現したいと思った
しかし俺には数字や図形、記号というものが、同時に酷く息苦しい別世界の借り物のように感ぜられた


それで俺は言語に逃げた
言葉の隙間だらけの、余りに不完全、曖昧な世界に、構築の可能性を見出そうとした


俺は詩人には憧れない
奴らの甘ったるい自分都合の感傷は、
いつだって俺を苛立たせる
俺は数学の、哲学の、緻密さ、完全への努力を愛していた


しかしその反面、俺は機械的なもの、統一的なものを憎悪し、世の中の事象に触れたその瞬間の、人間の精神の動き、個人の心情を最も尊いものとして重視した


俺は言葉による調和と逸脱を同時に見たかった
数学の方程式のような完全を、精査された言葉で導き出すことを理想とした
手段は重視しない
関心は、その完全なる美しい原理のような、言葉の連なりに触れることにある