季節

コップから溢れるばかりの情念が喉を塞ぎ
体は心を離れて宙ぶらりん
明日は今日へと漏れ出してる
見馴れた玄関にもおぞましい怪物が
道を忘れた魚のように漂って
通勤路の涼やかな木陰に不吉な塊が
机のようにそこにある


夜のベッドの懸命な映像にも美女はいない
地続きな平和にぴったりな物寂しい今のからだ
どうやら幼少の頃見た海も風も
俺をわすれて何処かの異国を流れてる


部屋には散らかった画集や海の写真
恥ずかしく剥き出しのこの歯も
似合ってもいないこの服も
すぐそこで光ってる青くつめたい空も
貼り付いたようにそこを動かない


書きかけの書類が内には溜まる
重さでそれは雪崩れ落ちるが
手に付かず風と舞う