モチーフへと

ぶかぶかとしたグレープフルーツの香り
髪は長く毛の先の湿りまでうっとりと
その鼻先の色と視界を包む匂いをまぜあわせて
そのままふたつの眼を瞑り
さながら子どもの興じるテトリスのように
走る列車の音に横切る木々と意識を溶け込ませ


時に足音、新聞の掠れる音にスープの匂い
青く涼やかな空気と、当たる卵黄のような陽射しに気を紛らわせ
その香りと形態すら鼻腔から皮膚の隅々まで流し込んで、遅すぎた花のように咲かせる


その香りと呼応した感覚を合図にブリキ・兵隊のおもちゃが靄の中、踏切りを横断する
その黒々とした眼の玉や赤い帽子、持てる長く艶やかな銃身を
この香りと空気、目の前のものと透かし濁らし惑わしながら
私の心臓はこのまま各駅の音と案内板、歓迎が続く駅真っ只中へと近づく


君を見つけた時、ぼくはお気に入りの家具を見ているようだ