嫌だ!

俺は漫画なんて描きたくない、ペンなんて持ちたくない
その絶体絶命の世界で剣を取って、勇者そのものになりたかった
俺は音楽なんて創りたくない
そのメロディに、その楽譜から香る陶酔そのものになって皆んなを癒したかった
歴史家より歴史の一ページに、監督よりも選手、巨匠よりその壮大な映画そのものに
でも何故だ?口に咥えた葉っぱが妙にキマらない
 

あれも嫌これも嫌、皆んなには後ろ指さされ惨めでまともにお喋りも出来ない
一人でいる時はなんだって出来るのに
お膳立てされた俺は何一つ満足に出来ない
才能や創作の恥と向き合うのが怖いから
緞帳が上がっても知らぬふり
達観した知性の坩堝を振り回してる
こんな人生には楽器の足りない物寂しいオーケストラがお似合いだ、観客の顔は徐々に白けて来る
 

結局いかれてゲーセンにたむろ、馬鹿笑いの奴らの方が天国に近く、何も知らない退屈なガリ勉野郎が今や俺より都会の夜を遊歩する
俺はまた舞台から降りて、次なる明かりを求めて才能と意志の天秤を弄ぶ
俺は噂話を聞こえないふりして鞄を肩にかけ直し、人々の批評で賑わうその道を足早に通り過ぎた