2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

水槽

これもダメ、あれもダメ、世界は眩しい水藻と灰色 手のうえで微かに兵隊のオモチャが落ちてしまわないように嬉しい感情穿ってみれば邪な感情レモネードのように草っ原に作業車と 世界は透明な森々にかこまれて近所のおばさんまるで水槽のなか使い捨て、買い…

収穫

未熟な秋は、個人の心情を蔑ろにする私はそれまで何度も見てきたそして遂に今それは、奇妙な胸像の塊となって、私の眼前に工夫も無くそびえ立っている 私は以前、不埒な振る舞いの優等生であった学問も運動もそつなくこなし、苦にしなかったしかし今わたしは…

退屈な海岸

私がその幻覚の粒子の海を泳いだ時、頭の上では紫とオレンジに淀んだ空がすぐ側まで垂れ下がっていた気をつけて呼吸をしてみれば、そこでは快活な天使がチクチクと羽で可愛い悪戯をした その香り豊かな海は、燦々と光を入れながら、私の汚れた体に追いすがる…

軽薄な児戯

本来的な美は、それに純潔を保ちながら、ひとつの遊具にも似た不安と哀切を併せ持つ その人がわたしと屈託の無い笑顔で話したあとに素知らぬ顔で便所で排泄することも、答案を用意してやれば、愚かにもテスト中に赤らんだ顔で盗み見るということもわたしは知…

街患い

この世で最も悖逆的な遊び 貧しい路地で揺れる看板 子供には切りづらい分厚い紙 割れたグラスの飛び散る感情の部屋 俺は知らない路地を歩いて、不穏な通行人のケツを次々と蹴りあげた 蹴りあげてやった、と言ってもいい まだ寒い月の照らす晩、その街で口紅…

桐箪笥

俺が深夜に目覚めて憂鬱から桐箪笥に導かれたとき外では鼓笛隊の練習風景がくりひろげられていたまばゆいばかりの光は、彼らの踏み締める真っ青な雑草を金属のように照らす 俺が開けた箪笥にあったのは、今はもう舞台を追放された、陽気な学芸員ばかり母が祖…

追憶

青春をはき違えた貴方へ もう無かったことにしようよあの体育館、木製の屑かごのこともそれからどうにか跳ぼうと頑張ったあの時も 大して美味くもない晩御飯を食べながら、考えたはずだよこういうのって、電球が照らす意味って、あんのかってこの街に雨が降…

のぞき穴

顕微鏡が覗いた宇宙 何も見当たらない顕微鏡が覗いた宇宙 アスファルトの匂い森で覗いた地球 自分しかいない森で覗いた地球 麻色の縞模様 舟はひたりと浮かぶ黒い雨は降りしきり隠れ蓑から覗かれる白い浜の貝とめて音色が視覚をかたちが匂いを 宿の灯りに こ…

雲の詩(うた)

雲は電線にぶつかって引きちぎられてしまったあっちの雲は老父に雨を落としていたけれど握っていた缶コーヒーはとっくの昔にぬるくなってしまってトラックに積んであった材木、梯子、肥料そのどれもが車につられて揺られて道行く人は気にもとめず こうしてる…

桜の樹

桜が海に生えましてそれはしづかな夜のことうるさい夜の海のこと樹皮を磨いてさらばえます いずれ花が咲くでしょう花びらしづかに落ちるでしょう海は気づかず、はこぶでしょうこれはしづかな夜のこと わたしは練炭だらけの部屋に居りましてしづかにぽつんと…

裸の商人

裸の商人、目に焼き付けてる ここは数千年には届かない 彷徨う仔牛赤い木の実のなる木に腰掛けて 羽根のとれたフラッグ振りまわしてる警備官 湿った地面、森林、お尻に滲んでる湿地帯 ゴッホが腰掛けた毛布は今や都会の燃料になって燃えている

午後五時にて

景色は登ってゆく鞠はころがる坂道、斜面はじゃがいも母も犬も家を見失い、オロオロしております決して不快では御座いません決して不快では御座いませんがどういうわけか、わたしは爪を噛んでいたようで爪は欠けていまして夕方のサイレンの音と戯れていたの…

変態の犬めがお前なんて犬だ犬なんだその垂れた耳恥ずかしくねぇのか くだらない話ばかりくっちゃべりやがって

樹海では女が微笑んでる

樹海では猫が微笑んでる今日も憎しみの感情よありがとうってまたいつか会うのよ ここにはわたしたちしかいないもの 赤い車に乗った女、噴水の前で立ち尽くしてる 美しいすすきを持って歩こうよここは未来じゃないみたい美しいすすき風に揺られて知らない土地…

くるしいのなら死体を吐け

くるしいのなら死体を吐けおまえのうちにはいるはずだ幾人もの死体おまえが殺した者たち、もしくはかばいきれなかった者たちの死体くるしいのならそれを吐けそうして白い屋根の下で口をゆすぎからっぽになった胃をみつめるときやるせない朝は過ぎる 知った顔…

散策

空は紫だった。あぜ道。田んぼ。 人は見当たらず、ただただ道を歩かされていた。 暫く歩いているとまえには、犬。なんだっけ、柴犬ってやつか? 咬まれることはないだろう。 不思議な確信を持って僕は近づき、僕は咬まれた。 犬に裏切られたという酷く悲しい…

偏頭痛

子供の遊んだ紙風船溶かして そんな水たまり見てみたいその近くの砂利にしゃがみこんで 溶けあう色々見ていたい ひまわり畑の丘のうえ ちいちゃなつめたい氷置いてきて みずいろに溶けてくの見てみたい 走る汽車のなか 黄色が滲むの知らん顔で見ていたい あ…

ある日の午後

なのに母はシャワーのヘッドとあらそっている シーツを這う蟻は宮廷の外に鎮座する家 官能的なイルカ正淑なシャチうるさがりのサメ彼らがベッドを引き倒し引き摺り込もうとする 二階の窓から見ていてあまりにも退屈な画であった

おそろしい欄干

詩が俺の中に入り込んできて、俺は体調を崩してしまった吐き気を催して、以前のようにはいかなくなった指でなぞることしか出来なくなってしまった 魂はぬるりとすり落ちてしまったそれはベトベトにぬれたただ自分らしく生きたいだなんて思っちゃっただけヌル…

残像

中学の時にみてたコインその反対側にあったのが今の僕 コップの下に滲んじゃってるミルクティー拭くのもめんどくさいやカランコロンと鳴るオモチャ 中学の時にみてたコイン裏側にうつってたのが今のぼく そこに滲んじゃってるのが今のぼく そのコインはたと…

今日はママがカレーを作ってまってる

そこで待っているのはひまわりそこで舞っているのがひまわり どこにも執念がない日々 白黒テレビに、才能をもてあました唄うたい鏡で囲まれた森では啄木鳥が音を数えるという 俺は頑丈な死人になりたいと、今日も近くをうろつき、他人の家になっている果物ば…

パチンと春を

作品よりも生き方に憧れちゃってそれでこじらせて抜け出せなかった一挙手一投足気にいらなくてやり直した結局うまくなんてならなくて乾いた風が肌を舐めて、骨を誘った昨日より今日はぬるく淡い不確かな価値しかないと知らされた 薄べったい春の香りをパチン…