海岸

俺の部屋には壊れて動かなくなった自転車がある
それはいつ見ても他人行儀にただそこにある
ペダルを触るとひんやりと冷たくて
それをただぼんやりと手でまわしていると


家族と行ったあの熱海の生暖かい風や
細かい粒子の砂粒まで思い起こさせてくれる
一生懸命作った砂の城も自然と這い回る蟹も
風と波によってあの日等しく連れ去られた

 

水の音聴いてったって             頭ん中はあの女のことばかり
俺は砂の城を蹴っ飛ばし
誰も気づかず水に流れた
俺は砂辺を蹴っ飛ばし
誰も気づかず風に流れた