街患い

この世で最も悖逆的な遊び 
貧しい路地で揺れる看板 
子供には切りづらい分厚い紙 
割れたグラスの飛び散る感情の部屋 


俺は知らない路地を歩いて、不穏な通行人のケツを次々と蹴りあげた 
蹴りあげてやった、と言ってもいい 
まだ寒い月の照らす晩、その街で口紅のはみ出した痩せた女を買い、寂しい蝿のたかる酒を楽しんだ 


夜にしか温度がないこの街は、語られ得ぬ精液と多くの労働者の不意な恫喝を生業にする 
嫌いな奴が偶々この街にいるのを見かけると、俺はぞくぞくするほどだ 
この街一帯を買い上げた地主は、今や豪邸の角部屋で、干涸びた縛り首の模型となっている 


俺はそんなことを自分の心に含ませながら、重病の獣の唸り声があちこちから響くこの街を歩いた 
それは格別で、各パートの悪魔どもが稚気に身を任せて、ぞんざいなセッションを繰り広げているようなものだった 
そこでは今はなき蒸留所の、度数の低い、やけに水っぽい酒を 
皆が黒々と 共通言語のように酌み交わす 


俺の母はこの街の住人だったが、気をおかしくして鞄もなく逃げ出し、結局その血はまたこの地に染み込むのを欲したってわけ 


ここいらでは悪臭の浮浪者がゴザ敷いて寒さから逃れるために、互いに押し込みあって身体を温める 


ほら、そこでは一等素敵なコートを風に震わせ、おまえが嬉しそうに昆虫ゼリーを啜ってる