桐箪笥

俺が深夜に目覚めて憂鬱から桐箪笥に導かれたとき
外では鼓笛隊の練習風景がくりひろげられていた
まばゆいばかりの光は、彼らの踏み締める真っ青な雑草を金属のように照らす


俺が開けた箪笥にあったのは、今はもう舞台を追放された、陽気な学芸員ばかり
母が祖母から譲り受けた着物たちは、一部が変色し、虫たちの懺悔と憂鬱をりっぱに誘っていた


俺はそれから別の段を開けたが、幼少のころ遊んだビニール人形の腕のかたっぽは、あの白い町の公園
胴体はここで埃の毛布を被せられて、へそを曲げている


同じ段では俺がクレヨンで描いた家族の似顔絵、落書き付きの怠惰な感想文、CとBだらけの陳腐な成績表
すべてがほそい紐で括られて一緒くた
時間はまとめて、用を無くしたカナブンのように
出口を見失っていた


俺はそこで鼓笛隊の練習が止んでいることに気づいた
朝はもう俺らの邪魔をし始めたってわけ