桜の樹

桜が海に生えまして
それはしづかな夜のこと
うるさい夜の海のこと
樹皮を磨いてさらばえます 


いずれ花が咲くでしょう
花びらしづかに落ちるでしょう
海は気づかず、はこぶでしょう
これはしづかな夜のこと


わたしは練炭だらけの部屋に居りまして
しづかにぽつんと見るでしょう
涙もすこしあるでしょう
ノックもたしかにあるでしょう
それはしづかな冬のこと
まだ春には早い夜のこと


海はせわしくはこぶでしょう
わたしの身ですらはこぶでしょう
きっと気づかず、はこぶでしょう