俺は探偵かロックスターか海賊になった

俺は探偵となって、この仇を仇で返す街の番人見習いになった
降りかかる赤黒い浄化作用
火の粉を物ともせず 
日々自分の関心の探究に勤しんだ
くだらない馬鹿騒ぎ、借り物の犬どもが集まったような午後の饗宴
興味本位で小さな麻薬にも手を出した
それの演じる陶酔を、日常のなかに歩かせることに成功した
それは青く暗い病的な風のように熱っぽい体に吹きつけた
あの程よく他人行儀なバーに行くこともやめなかった
俺はそこで歴々の芸術家たちの人生に毒霧を吹きかけた、あの光沢ある緑の沈黙の酒に耽溺した
それは俺を遙か深い洞穴から焚きつけ、女どもの白く浮わつくワンピースの裾や、煙のように体に巻きつく香水に釘付けにした


もちろん俺は本業も疎かにしなかった

 

俺は出来るだけ多くの依頼を受け入れた
俺はその埃っぽいが、60年代、70年代のロックミュージックが気怠げに鳴り響き、外国の趣味の悪い雑貨やコーラの瓶、食べかけのサンドウィッチで散らかる書斎で仕事をしていた
依頼人は意外かな?女が多い
とは言っても、探偵映画に良くあるような、深い陰影のある謎の美女なんかじゃない
そら、そういう奴だって稀にはいるが、大概は真っ白なビルの二階で細々とやる闇金の奴らに追われる風俗嬢、あとは露骨に金のない地方学生の女や、家庭を灰色に投げうった急ぎ足のキャリアウーマン
もちろん、眼鏡のネジが緩んだ冴えないサラリーマンみたいな、残念無念なヤロウもそれなりにいる

 

そいつらが階段を登って来る音は、いつだって俺を憂鬱にさせるんだ