春の変貌

私は君になりたい
きみのまま寝床で起きて
気怠い体を噛み付いた蛇のように引きずって
ありふれた朝食に口をつけ
これからのことに物思いに耽っていたい
自然や文明がもたらす美や利の拡がりには目もくれず
ただ自分のあるく姿に魅入られていたい


まえを歩くときにもそこには映画のような音楽が決壊したダムのように
流れて、ひっくりかえって、森林のなかより澄んでいたい
ちいさな鈴の音も聴きもらさず、子どもの足あとにも気づいていたい、それがきえてしまうことを忘れずに感じていたい
生活の意味や位置を押し流して、少年のように筏で眠りこけたい


男どもの鷹のような目に震え確かめながら
近所の貴婦人の香水の香りに、すこしばかり
未来の手当てをみていたい
ベッドの中でもそのぬくもりではなく、自分に魅入られ深く入り潜り込んでいたい
小鳥のさえずりはありふれているけれど、
それでも今日の今はすこし何かが違うような
意味よりも位置を気にかけて礼拝する少女の足かげに石ころ