爪先はまぼろしのように

爪先はまぼろしのように


海を磨く
誰かが磨いた海


恋人とふたり
何となく歩いていた
黒い波は光を投げうち、畝る道をあそぶ
あるくだけ
はふるだけ
海岸には光が無く
土地には粒子無く
漂流したのは、ランドセルのみでした
海にあるのは、砕けた皿ばかり
どうしようか
こればかり


爪先はまぼろしのよう
細かく震動するだけで
あの妖精の蔓延る森にだって波が追いかかり
美はこれじゃあ止まらない収まらないよ
あの廃れた牧師の薄ら笑い、曲った腰付きのように
人殺しをさがす少女の目のように