カラス

俺の首が森繁く通路に転がった
喜んでいるのは通りすがりの人々
悲しんでいるのは俺と寝た事のない人ばかり


トナカイの心臓を盗み出した男は言った
此処にはもう何もないと
それを自分の顔に近づけて
クゥーッと大きく息を吸い込む
選ばれた夜の血の匂いだ


苦しんだ人々はもう此処にはおらず
真紅の夜に消えた娘を追って
皆んなみんな居なくなってしまった


その娘はとても愛されていて
白い靴をひきずるように歩いてた
しゃべるときには眼を
パチパチとするクセがあって
男の人は上目遣いでみてる


そこに転がっているのは俺の首か?
あの娘の首か?


いずれにせよ、もうカラスが持っていってしまったらしい
みずいろのビー玉の眼を持つカラスがトタン屋根までもっていってしまった