霧の夜

俺の生活には魔術的なものが欠けている


シャーロックホームズにだって、パイレーツオブカリビアンにだって、それはあんだよ


女性
魔術的陶酔


俺はシャーロックホームズになりたかったが、それは必ずしも探偵になりたいということを意味していなかった
それが意味したものは、あの馬車が霧に微睡う倫敦、その世界で俄かに捲き起こる、魔術的陶酔の世界に生きたいということだったのだ
そしてその不安定な幻覚のなかにサイズの合わない自分の身を置きながら、同時にその陶酔の霧のなかで、唯一の知覚する人間であり続けることを欲していた


それこそが夢幻の霧のなかで正しくその眼を使うシャーロックホームズであり、時には海から残虐と無慈悲を引っぺがすお調子者のジャックスパロウであり、そして常にこの単調な現世における足取り軽い詩人であったのだ


幻覚の中で知覚するもの、それこそが詩人だ
彼らは自分の魔術の源泉を、却ってこの世界の単調なトーンのために、その泉から白い蛇を這い踊らせる